Saturday, January 22, 2011

【本レビュー】 見える化

昨年末から、オペレーション業務のプロセス見直しや、
フローの改善を進めてきたのだけど、
そこで「見える化」という言葉がよく出てきた。

「もっとオペレーションフローを見える化する必要がある」
「各オペレーターのパフォーマンスを見える化しないといけない」などなど。
つまりは暗黙の了解で進めている業務をなくし、
もっと体系的、定量的にオペレーションを管理するようにするということだと思う。

それは僕も同意なのだけれど、この「見える化」という概念がやっかいで、
全員が抽象的な理解しか持てていないから、
業務をチャートやエクセルである程度可視化できたところで、
ハイお終い、というケースが何度かあった。

「見える」ようにすることで本来求めていたものは、
組織コミュニケーションの活性化だったり、
問題の早期発見ということなのに、
「見える化」という仕組みを作ること自体が目的になっていた。

年末に日本に帰ったとき自分の部屋の本棚を眺めていたら、
以前友達からもらった「見える化-強い企業を作る見える仕組み」という本が目についた。
何と無くスーツケースに放り込んでフィリピンに帰って来たのだけれど、
この前改めて読んでみたら、今の組織マネジメントにピンポイントで役に立つような内容で、
学ぶことが大いにあった。


まず、見える化という概念の説明の前に、
著者は強い企業を作るためには、強い現場力が必要だと述べている。
ここでいう現場力というのは、以下の3つ。
1. 決められたルーチン(日常業務)をこなすだけでなく、現場で発生するさまざまな問題を「当事者」として解決しようという強い意思、柔軟な頭脳、強靭な足腰を有している

2. 現場の一部の人間だけがそうしたマインドや能力を持っているのではなく、現場の行に携わるすべての人間が、現場力の重要性を理解して参加する「組織能力」にまで高められている

3. たんに改善活動を行うのではなく、現場力を徹底的に磨きこみ、競合他社をはるかに凌駕する「優位性」にまで高めようとする高い志・目標設定をしている

つまり、現場がただ与えられたことをするだけではなく、
自ら問題を発見し解決できる、問題解決型組織だということ。

そういった組織であって初めて、この「見える化」という概念が本来の意味を発揮する。
「見える化」とはそもそも何を見えるようにするのかというと、
それは「問題」を見えるようにするということ。

オペレーションフローや、オペレーターのパフォーマンスを可視化するのは、
問題を発見するための途中のプロセスにすぎない。
問題を見えるようにするためには、
第一に企業にとって何が問題になのかを設定する必要がある。
そして、問題発生時にはそれを包み隠さずタイムリーに顕在化させ、
人間にっと最も敏感な感覚である視覚に訴えていく。
それが「見える化」の本質だという。

見える化を進めることは企業にとって、
特にオペレーション部門にとって非常に有益だと思う。
ただ、見える化を進める企業は以下の4つの失敗を犯しがちだという。
1. 悪い情報が隠されて見えていない
2. 組織としてでなく、属人的にしか見えていない
3. タイムリーに見えていない
4. 事実ではなく、伝聞情報しか見えていない

その他にも、IT偏重、数字偏重、生産偏重、仕組み偏重など、
本質的なアプローチができずに、
見える化を進めたにも関わらず生産性を下げる結果になった企業もあるらしい。

本では、いくつもの企業のとりくみを事例にとってまとめられているが、
簡単に見える化のシステムを図でまとめるとこうなる。
(本にある図を自分の理解度に合わせて変えてみた)

この図を簡潔に説明できる自信がないので、大分端折って話すと、
問題を発見するものさしは、基準とステータスの2つがある。
基準は、オペレーションを進める上で最低限あるべき姿、
ステータスは、クォーター、月、週における目標進捗。

基準からずれている場合、それは異常として検知され、
その問題が生まれた原因を解明する必要がある。

ステータスは、設定していた目標が達成できない場合、
そこに生まれるギャップが問題となり、解明される対象となる。

真因が明らかにされてから、
蓄積された知識(ヒント)と経験を使って、問題を解決する。

そして、その問題解決によって生まれた効果は全員で共有され、
新たな経験として蓄積される。

つまり、この基準とステータスという「見える化システム」を通して問題を見えるようにして、
それを包み隠さず、タイムリーに、全員に見えるようにする。
そして、組織が一丸となって問題解決することが「見える化」の最終目標ということだ。



今回のこの本を読んで「見える化」というのはどういうことなのか理解できてよかった。
そもそも、このような抽象的な言葉を日頃の業務で使うのはよくない。
人によってそれが何を意味するのか明確でないし、
「見える化」をした先に何を求めているのか明らかでないと、そもそもする意味がない。

いまのオペレーションセンターはもう立ち上げと言えるレベルではなくなり、
いかに組織としてまとめていけるかというレベルになっている。
当初のように「勢い」だけでは、もうどうにもならない。
オペレータを教育するだけでなく、もっと僕達自身がマネジメントについて勉強しないといけない。
日々勉強。


2 comments:

  1. オレもiTunes Storeで電子ブック版が期間限定無料だったから
    「Zappos」の本読んだよ(日本語版だけど)
    ブログ見てるだけだけど、岡マの職場に似ている気がしたから
    薦めようと思ってた(笑)


    「見える化」って難しいよね。
    下手すると管理者が管理したい(評価を付けたい)ために
    やろうとしているんだと思われがち。

    仕事のやり方だったり、システムみたいなものよりも
    「問題の原因を属人的なものと思わない(人のせいにしない)で」
     みんなでオープンに話し合う」
    「問題はみんなで解決する(他人事だと思わない)」
    という風土が大事なんだと思う。

    そのためにはまず「何か良くて、何が悪いのか」を共有することだと思う。
    「ミスしたら減給」とか言われたらみんな隠すようになっちゃうからね。

    ブログにあるようにITの力を借りて体裁を整えるのは簡単だけど、
    どうやって仕組みに魂を入れるかが大事!頑張って!

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  2. だいしょーさん

    >仕事のやり方だったり、システムみたいなものよりも
    「問題の原因を属人的なものと思わない(人のせいにしない)で」
     みんなでオープンに話し合う」
    「問題はみんなで解決する(他人事だと思わない)」
    という風土が大事なんだと思う。

    本当にそうですよね。
    見える化の仕組みなんて、やろうと思えば簡単に作れちゃいますよね。それをいかに管理して、各個人が実行するかの方がはるかに重要ですね。

    そういう意味で、見える化と従業員のマインドセットを変えていく教育は一心同体ですね。フィリピンでやろうとするとそこが一番難しいところかもしれないですけど。笑

    日本に帰ったとき話しましょう!

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